広島県ふくやまで特別支援教育に携わる
関係者のHPです

寄稿 学校再開に向けて思うこと~ICTと子どもたち~

寄稿
    学校再開に向けて思うこと~ICTと子どもたち~ 
                                                            
                     事務局員 中学校通級指導教室担当 Yoko KUWAHARA 

 今回のコロナ騒動で、私たちの日常生活も、行動様式も大きく変化しました。変化せざるを得なくなって、慌てて勉強して獲得したものがたくさんあります。もちろんまだまだ勉強中のものも。 
 例えば、個人的には ビデオ会議アプリzoomの導入、事務局会などの開催 
          動画編集ソフトの導入、HPの作成 
          オンラインドライブの活用、共有など 
      大きくは、市内の公立小中学生の全員にGoogleアカウントの割り当て 
             G-Suiteの導入(現在、できることはまだまだ限られていますが) 


 一見すれば、ICTがものすごい勢いで活性化されたように思えます。ただ、このICTを使って何ができるかはまだ始まったばかりというところで、ハードにソフトが追い付いていないというのが正直なところです。 ICTとは、information communication technology(情報通信技術)の略ですが、コミュニケーションの意味を広義に解釈し、人と人とが豊かに向き合う手段ととらえ活用できたらよいのではないかと思います。 

 先日、Googleが開催したオンラインでの研修に参加しましたが、学校が再開して、教室での学びが通常運転になったとしても、もしかしたらの休校があったとしても、オンラインでの学びを併用することで、これまでできづらかったことや、やったことのないこともうまくできるようになっていく未来があり得ます。例えば、LD傾向のお子さんが、キーボード入力や音声入力、読み上げを当たり前の選択肢として使えるようになり、書くことや読むことの負担軽減は大きくなるかもしれません。オンラインでの課題配布や提出により、物をなくしたり提出を忘れてしまったりするお子さんには、支援がしやすくなるかもしれません。  対面だと緊張して話せないお子さんが、オンライン対面だと話してくれるようになったという事例も実際にあったそうです。 


 ただ、そのような状況の中で、次は何が起こるか、どんな目配りや支援を行わなければならないかを私たちは考えなければいけないのではないでしょうか。「これは便利だ」で適用してしまうその前に、「だけど、これまで支援を必要としてきた子どもたちには、これを適用することで何が起こるだろうか?また、ICTを適用することで、新たに支援を必要とする子どもが出てくるだろうか?それはどんな困難だろうか?」と逆説的に考える視点が必要なのではと、展開されていく研修を受けながら思いました。 

 実際、次々に出される課題を一生懸命こなさなければならないと思い、気持ちが辛くなったケースや、自分ではないアカウントにログインして、そのまま気づいていないケース、そもそもネット接続のデバイスが家庭にないというケースもあります。「合理的配慮」を象徴する有名なイラストに「Fair-is-not-equal(公平は平等ではない)」というものがありますが、いろいろな立場や思いを持つ子どもたちがいることを、ここからは更に心に置いて、細やかな配慮を考えていく必要があります。 

 これまで時間をかけて手作業でやってきたことの内、ICTを活用することで合理化できるものは積極的に使えば良いと思いますし、自分でも大いに活用をしています。実際、福山特別支援教育研究会の発信も、ここ数年で大きく変わってきました。それでも、基本は変わらず、「伝えたいこと」ありきの、手段の変化だと思います。子どもたちの現在の状況や、背景や数値、全てを総合して、その子に何が必要なのかを考えるアセスメントを軸にして、理解や支援の肉付けを手伝っていくことが、これからもできるようにしたいです。 
 6月1日から学校再開、また、経済活動も段階的にではありますが、徐々にいつもの生活に戻っていきます。もちろん、ご存知のように、新行動様式が求められ、これまでとはまた違った生活になっていくことは必然ですが、まずは子どもたちと直接会って話せることの喜びを味わい、子どもたちの不安や悲しみ、気持ちの受け止めを行っていきましょう。休校前の子どもたちは、もう、3か月分近くも成長しているのですから。

画像はbusinessdisability international(HP) When is Equality not Equality?よりお借りしています。